「こうなってもこれができる」前向きな明日を
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Q. 先生が一番力を入れていることは何ですか?
どう死を迎えるかということはとても大切ですね。 たくさんの悲しい死に方をみてきました。 卵巣がんを患い、受験に受かっていたのに高校へ行けない中学3年生。 お母さんはがんばりなさいというけれど、何をがんばればいいのかわからない…。飲食できないのに氷を欲しがるイレウス患者。同室の人が見かねて氷枕の氷をあげていました。食べさせてあげても、水はイレウスチューブから排出できるので「もっときれいな氷をあげたい」と言いましたが、ナースには受け入れてもらえませんでした。 おしゃれが大好きな患者が吐いてしまっても、少しだけ汚れたシーツの交換は週1回といって交換してあげられない……。
こんな死なせ方しかできないのかと思いましたね。 死を迎える時、十分な痛み止め、心のケア、日常生活のクオリティの改善をしていきたいと心の底から思いました。
だから、「緩和ケア」はずっとやりたかった。 「井上レディースクリニック」では 人生会議「アドバンス ケア プランニング」(ACP)をスタートさせました。
人生の最期をどのように迎えたいかを事前に家族などと話し合っておくのです。 終活のための「エンディングノート」だけでなく、やりたいことをリストアップする「スターティングノート」も併用して、前向きに明日のことを考えられるようにしています。 自分のやりたいことをたくさん書き連ね、たとえ状況が少し悪くなっても「まだこれならできる」と思えれば、前向きになれますよね。
また、乳がん患者とピンクリボン賛同者に名前を書き込んでもらい、「ピンクリボン」キルトもつくりました。 「キルトビー」という言葉があって、切れ端を縫い合わせて1枚布にする「キルト」を始めると人が蜂(ビー)のように集まってきて、3時からのアフターヌーンティが始まり、おしゃべりが弾むんです。
キルトが人をつなぎます。いろいろな思いもつなぎます。 話をすることで心が軽くなりますし、百枚近い布をつなぎ合わせることで「自分だけでない」という気持ちがします。 どんなことでも自分の足跡になるのです。
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