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医師というより、人間としてやれること。”自分や家族がかかりたい病院”と目指す「緩和ケア」

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常勤麻酔科医 山田 佐世子さん

昭和大学医学部卒。大学病院に12年勤務し、4年間は緩和ケアチームリーダーとしてのチームの連携に努めてきた。井上レディースクリニックでは麻酔分娩(無痛分娩)に携わるとともに、院長の理念に共感し、がん患者に限らない、幅広い緩和ケアに取り組み始めている。

「お産は痛いもの」から女性を解き放つ

  • Q. 井上レディースクリニックで働くようになった経緯と無痛分娩とは?

自分や家族がかかりたい病院――それは井上レディースクリニックの理念でもあります。実は、私も3人の子どもをここで出産しています。 3番目の子どもを産んだ時に、院長から「女性の一生に寄り添う“かかりつけ医”として、緩和ケアを一緒にやってほしい」と声をかけられました。医師として院長には敬意を持っていましたし、多摩地域に根差した病院で働きたいという思いもあったので、最初は週1回の非常勤として、2013年からは常勤として勤務し始めました。

なんのリスクもない妊婦さんの様態が急変する――そういうことが実際に起こります。 だから、すぐに緊急手術に入れるように麻酔医が常勤していることはとても重要なんです。

そして、「お産は痛くて当たり前」ではなく、 希望者には麻酔を使って上手に痛みを軽減したい。

井上レディースクリニックでは、麻酔を使ってお産の痛みを軽減させる麻酔分娩(無痛分娩)も行っています。 痛みは軽減したいけれど、少し不安――そういう妊婦さんのためには、麻酔教室を設けています。自分がここで出産した時の経験を話し、今度はサポートする側として不安を取り除き、知識をきちんと伝えるようにしています。

なにより大切なのは妊婦さんと赤ちゃんの安全。 ですから、麻酔分娩が安全に行えるように、私ひとりではなく、チームで連携してサポートするようにしています。 麻酔が効きすぎると陣痛が弱くなってしまうので、助産師と一緒にさまざまな症例を経験しながら、妊婦さんの痛みの軽減と安全に努めてきました。

そして、夜は当直医や看護婦にしっかりと安全を守ってもらっています。 麻酔分娩者に対するアンケートで10点中、8.7~9点と高得点をいただいているのは、助産師・当直医・看護婦との協力体制がしっかりしているからだと自負しています。

「医師というより、人間としてやれること」

  • Q. 山田先生が大切にしていることを教えてください。

私がこのクリニックで特に意識しているのがチーム連携です。 大学病院に在籍していた時、緩和ケアチームリーダーとして主にがん患者の「身体的」「精神的」「社会的」痛みの緩和にチームで取り組んできました。リーダーになった当初は自分が努力すればチームを引っ張っていけると信じていたんです。 でも、それではダメでした。 医師、麻酔医、看護師、広域では歯科医等も含め、それぞれの専門性がきちんと生かされて、初めて患者さまに対してもいいケアができることを学びました。

ですから、今は医師としての仕事以外でもクリニック内のことはなんでも積極的に取り組んでいます。当院には「医療安全」「防災」「顧客満足度」等の各委員会があり、私も「顧客満足度」のリーダーを務め、麻酔医としてだけでなく、患者さんが少しでも当院で安心して過ごしてもらえるようにチームで取り組んでいます。

  • Q. 井上レディースクリニックが目指す「緩和ケア」とは?

井上レディースクリニックでは「女性の一生に寄り添う“かかりつけ医”」を掲げ、「緩和ケア」に取り組み始めています。 これから人口減少が進み、高齢化が進んでいくわけですから、井上院長のビジョンである「女性の一生に寄り添う“かかりつけ医”」は社会のニーズでもあるわけです。

私はがん患者を中心に緩和ケアを行ってきましたが、井上院長はもっと広義での「緩和ケア」を目指しています。 “病院という器”の限界を感じ、「コミュニティビル安庵」を建ててみなさんがほっとできる場所を提供しているわけです。 私はその想いに共感し、「医師というより、人間としてやれることがまだまだある」と感じています。

緩和ケアの領域ではままならないことが多いものですが、医師を辞めたいと思ったことはありません。がっくりきて、もう無理だと思うタイミングに限って、患者さんから温かい言葉やご家族の方から手紙をもらったりします。

感謝の一言で、「まだ自分にできることがある」と思えます。

医師ばかりが強いわけではありません。 いろいろな形で患者さんに背中を押してもらっています。 ですから、私はよき聞き手になり、今度は自分が“元気”を与えたいと思っています。

井上院長が目指す「緩和ケア」には前例があるわけではありません。これから仲間と一緒にゼロから一歩ずつ進めていくつもりです。

井上レディースクリニック

[場所] 〒190-0013 東京都立川市富士見町1-26-9 TEL:042-529-0111 FAX:042-522-2109

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